MDMツール比較2026:Microsoft Intune・Jamf・Kandji・Mosyleを中小企業向けに徹底検証

「社員のPCやスマートフォンを会社で管理したいが、どのツールを選べばいいかわからない」「テレワーク導入で社員が私物デバイスで業務をしているが、セキュリティが心配」——これは中小企業のIT担当者が最も頻繁に抱える悩みの一つです。

MDM(Mobile Device Management) は、企業のデバイスを一元管理し、セキュリティポリシーを強制適用する仕組みです。2026年現在、リモートワーク標準化・BYOD普及・セキュリティ要件強化を背景に、中小企業でも導入が急増しています。


目次

  1. MDM・UEM・EMMの違いと選ぶべき理由
  2. 比較対象ツールの概要
  3. 対応OS・デバイス比較
  4. セキュリティ機能比較
  5. デバイス管理機能比較
  6. 料金比較【2026年最新】
  7. 導入難易度・運用負荷
  8. 製品別詳細評価
  9. BYOD(私物デバイス)管理の考え方
  10. 中小企業向け導入ロードマップ
  11. よくある質問(FAQ)

MDM・UEM・EMM:用語の整理と選ぶべき理由

用語の違い

用語 正式名称 管理対象 現在の位置付け
MDM Mobile Device Management スマートフォン・タブレット 現在はUEMに統合
MAM Mobile Application Management アプリのみ MDM/UEMの一機能
EMM Enterprise Mobility Management MDM + MAM + MCM UEMに統合
UEM Unified Endpoint Management PC・Mac・スマートフォン・タブレット・IoT 現代の主流

現在「MDM」と呼ばれる製品のほとんどは実際にはUEM(統合エンドポイント管理)です。PC・Mac・iOS・Android・Windows Serverを一元管理できます。本記事ではMDMと表記しますが、UEMの意味で使用します。

なぜMDMが必要か:導入効果の整理

セキュリティ面の効果:
✓ 紛失・盗難デバイスのリモートロック・ワイプ
✓ パスコード・暗号化ポリシーの強制適用
✓ 会社承認外のアプリのインストール禁止
✓ 脆弱なOSバージョンのデバイスを業務システムから締め出し
✓ VPN・Wi-Fi設定の自動プロビジョニング

運用面の効果:
✓ 新入社員PCの初期設定時間を数時間→数分に短縮(ゼロタッチ展開)
✓ ソフトウェアの一括インストール・アップデート
✓ デバイス台数・OSバージョンの棚卸しが自動化
✓ 退職時のデバイスリセット・業務データ削除が即時対応可能

比較対象ツールの概要

製品 提供元 主な強み SMB向けプラン
Microsoft Intune Microsoft Windows + 全OS統合・M365統合 ✓(Microsoft 365 Business Premiumに包含)
Jamf Pro Jamf Apple専門・企業向け高機能 △(中規模以上向け)
Jamf Now Jamf Apple専門・SMB向け簡易版 ✓(3台まで無料)
Kandji Kandji Mac特化・自動修復・使いやすさ ✓
Mosyle Mosyle Apple特化・学校・中小企業 ✓(低価格)
VMware Workspace ONE Broadcom 全OS・大規模向け △(大企業向け)
SOTI MobiControl SOTI Android・Windows特化 △

対応OS・デバイス比較

対応プラットフォーム詳細

プラットフォーム Intune Jamf Pro/Now Kandji Mosyle
Windows 10/11 ✓(最優秀) ✗ ✗ ✗
macOS ✓(機能は限定的) ✓(業界最高) ✓(優秀) ✓(優秀)
iOS / iPadOS ✓ ✓ ✓ ✓
Android ✓ ✗ ✗ ✗
Linux △(Preview機能) ✗ ✗ ✗
ChromeOS △ ✗ ✗ ✗
Windows Server ✓ ✗ ✗ ✗

環境別の推奨

Windows中心の企業:
→ Microsoft Intune 一択(Windows管理機能が業界最高水準)

Mac中心の企業(Apple Silicon / Apple Device Program利用):
→ Jamf Pro(大規模・高機能)またはKandji(中規模・使いやすさ優先)

Apple + Windows混在:
→ Microsoft Intune(両対応・ただしMac管理はJamfに劣る)
→ または Jamf(Mac)+ Intune(Windows)のデュアル運用

BYOD(私物スマートフォン主体):
→ Microsoft Intune(iOS + Android両対応・MAMで個人/業務分離可)

セキュリティ機能比較

主要セキュリティポリシー強制機能

機能 Intune Jamf Pro Kandji Mosyle
暗号化強制(BitLocker/FileVault) ✓ ✓ ✓ ✓
パスコード複雑さ強制 ✓ ✓ ✓ ✓
OSアップデート強制 ✓ ✓ ✓ ✓
リモートロック ✓ ✓ ✓ ✓
リモートワイプ(全消去) ✓ ✓ ✓ ✓
選択的ワイプ(業務データのみ) ✓ △ △ △
脱獄/ルート検知 ✓ ✓ ✓ ✓
アプリホワイトリスト/ブラックリスト ✓ ✓ ✓ ✓
条件付きアクセス(コンプライアンス確認) ✓(Entra ID連携) △(SAML経由) △ △
SIEM統合 ✓(Microsoft Sentinel) ✓(API) ✓(API) △
証明書管理(SCEP/PKCS) ✓ ✓ ✓ △
VPN設定プロビジョニング ✓ ✓ ✓ ✓

Intuneの最大の強み:条件付きアクセス

IntuneとMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)を組み合わせると、「コンプライアンス準拠デバイスからのみMicrosoft 365にアクセスを許可する」という強力なポリシーが実現できます。

例:

  • OSアップデートが未適用のデバイス → Microsoft 365へのアクセスをブロック
  • MDM非登録のデバイス → 社内システムへのアクセス拒否
  • パスコード未設定のスマートフォン → メール受信をブロック

これはゼロトラストネットワークの実現に直結する機能です。


デバイス管理機能比較

展開・プロビジョニング機能

機能 Intune Jamf Pro Kandji Mosyle
ゼロタッチ展開(Windows Autopilot) ✓(業界最高) ✗ ✗ ✗
ゼロタッチ展開(Apple DEP/ADE) ✓ ✓(業界最高) ✓ ✓
アプリ配布(App Store連携) ✓ ✓ ✓ ✓
パッケージ配布(pkg/exe) ✓ ✓ ✓ ✓
設定プロファイル(Wi-Fi・VPN・証明書) ✓ ✓ ✓ ✓
スクリプト実行(PowerShell/Bash) ✓ ✓ ✓ ✓
インベントリ(デバイス台帳) ✓ ✓(詳細) ✓ ✓
パッチ管理(OS更新) ✓ ✓ ✓ ✓
リモートデスクトップ・サポート ✓(Teams統合) ✓(Remote Assist) △ △

Kandjiの差別化:自動修復(Remediation)

Kandjiは「Blueprints」と呼ぶ設定テンプレートと、「Remediation」(自動修復)機能が特徴的です。

設定違反(例:FileVaultが無効化されている)を検知すると、管理者の手動対応なしに自動で修正します。IT担当者の作業負荷を大幅に削減できるため、IT専任スタッフが少ない中小企業に特に有効です。


料金比較【2026年最新】

月額ライセンス費用(エンドポイント単価・目安)

製品 価格モデル 月額目安 備考
Microsoft Intune(単体) ユーザー単位 約¥700/ユーザー M365 Business Premiumに包含
Microsoft Intune(M365 Business Premium) ユーザー単位 約¥2,750/ユーザー Intune + Defender for O365 + Azure AD P1 + Officeアプリ
Jamf Now(無料枠) デバイス単位 3台まで無料 Apple専用
Jamf Now(有料) デバイス単位 約¥320/台 Apple専用
Jamf Pro デバイス単位 約¥450〜700/台 要見積もり
Kandji デバイス単位 約¥450〜600/台 Apple専用・年払い
Mosyle Business デバイス単位 約¥180〜380/台 Apple専用・低価格
Mosyle Manager デバイス単位 無料(機能制限あり) Apple専用・教育・非営利

価格は参考値です。台数・契約期間・為替により変動します。必ず各ベンダーに正式見積もりを依頼してください。

30台で運用した場合の年間コスト比較

シナリオ 製品 年間コスト概算
Windows 30台(Intune単体) Microsoft Intune 約¥252,000
Windows + M365 Business Premium M365 Business Premium 約¥990,000(Office等含む)
Mac 30台(最安) Mosyle Business 約¥64,800〜136,800
Mac 30台(使いやすさ優先) Kandji 約¥162,000〜216,000
Mac 30台(高機能) Jamf Pro 約¥162,000〜252,000
Mac + iPhone 30台ずつ(混在) Jamf Pro 約¥270,000〜504,000

導入難易度・運用負荷

IT専任スタッフが少ない中小企業にとって、導入後の運用が継続できるかが最も重要です。

難易度評価(★が多いほど難しい)

製品 初期設定 日常運用 日本語UI 国内サポート 推奨スキルレベル
Intune ★★★☆ ★★☆☆ ✓ ✓(Microsoft) IT担当者
Jamf Pro ★★★★ ★★★☆ ✓ ✓(国内パートナー) Jamf認定者推奨
Jamf Now ★★☆☆ ★★☆☆ ✓ ✓ IT担当者
Kandji ★★☆☆ ★☆☆☆ △(英語) △(英語サポート) 非IT担当者でも可
Mosyle ★★☆☆ ★☆☆☆ △(英語) △(英語サポート) 非IT担当者でも可

製品別詳細評価

Microsoft Intune ★★★★★(Windows企業の標準解)

こんな企業に最適:

  • Windows PCを主に使っている
  • Microsoft 365 Business Premiumのライセンスが既にある(Intuneが付属)
  • iOS・Androidのスマートフォンも管理したい
  • Microsoft Entra IDによるゼロトラスト・条件付きアクセスを実現したい

強み:
Windows Autopilotによるゼロタッチ展開(箱から出してネットに繋げば自動セットアップ完了)は業界随一。Microsoft 365・Defender・Entra IDとのネイティブ統合でセキュリティポスチャー全体を統合管理できます。

弱み:
macOS管理はJamf・Kandjiと比較して機能が限定的。設定の複雑さがあり、適切に構成するには学習が必要。

公式サイト: Microsoft Intune


Jamf Pro ★★★★★(Apple企業の最高峰)

こんな企業に最適:

  • Mac・iPhone・iPadが中心の企業
  • 開発会社・クリエイティブ企業・医療・教育
  • Apple Business Manager(ABM)との完全連携が必要
  • 高度なポリシー管理・コンプライアンス要件がある

強み:
macOS/iOS管理機能は業界で最も成熟。ABM/ASMとのネイティブ統合、詳細な構成プロファイル、拡張Inventoryによるデバイス把握。国内でもJamf認定パートナーが多く、日本語サポートが充実。

弱み:
Windows・Androidは管理不可。価格が高め。フル活用にはJamf認定の知識が必要。

公式サイト: Jamf


Kandji ★★★★☆(Mac企業のベスト体験)

こんな企業に最適:

  • Mac中心のスタートアップ・IT企業
  • IT担当者のリソースが限られている
  • 自動修復機能でメンテナンスを最小化したい
  • モダンなUIで管理したい

強み:
自動修復(Remediation)機能により、設定違反の自動修正が可能。Blueprintsによる設定テンプレートが直感的で、IT経験が少ない管理者でも扱いやすい。UIが最もモダン。

弱み:
日本語UIなし・英語サポートのみ。Windows・Android非対応。Jamf Proと比較すると一部高度な設定が未対応。

公式サイト: Kandji


Mosyle Business ★★★☆☆(Apple企業のコスパ最強)

こんな企業に最適:

  • 予算を抑えたいApple環境の中小企業
  • 学校・教育機関・非営利法人(Manager版は無料)
  • 基本的なMDM機能で十分な場合

強み:
Apple専用MDMの中で最安価格帯。基本機能は十分。Mosyle Auth(Apple ID管理)も追加可能。

弱み:
高度な機能(自動修復・詳細ポリシー)はKandji・Jamfに劣る。英語UI・英語サポートのみ。

公式サイト: Mosyle


BYOD(私物デバイス)管理の考え方

BYOD vs COPE vs COBO

モデル 正式名称 説明 セキュリティ プライバシー
BYOD Bring Your Own Device 私物デバイスを業務利用 低〜中 高(個人データ混在)
COPE Company Owned, Personally Enabled 会社所有・私的利用も許可 高 中
COBO Company Owned, Business Only 会社所有・業務専用 最高 低(管理が全面的)

BYODのMDM管理方法:MAM(モバイルアプリ管理)

BYODではデバイス全体を管理するMDMではなく、業務アプリのみを管理するMAMが現実的です。

Microsoft Intuneのアプリ保護ポリシー:

  • デバイス全体を登録させることなく、OutlookやTeamsのデータのみを保護
  • 業務データのコピー・貼り付けを制限(個人アプリへのデータ流出防止)
  • 退職時に業務アプリのデータのみ選択的に削除(個人写真等は無傷)
BYODのMDM設定原則:
✓ 個人スマートフォンのデバイス登録(フルMDM)は不要
✓ 業務アプリ(Outlook・Teams等)のMAMポリシーで業務データを保護
✓ 退職時は業務アプリのリモートワイプのみ実施
✓ プライバシーポリシーを社員に明示・同意取得
✓ 個人デバイスの位置情報・個人ファイルは追跡しない

中小企業向け導入ロードマップ

フェーズ1:現状把握(1〜2週間)

1. 管理対象デバイスの台数・OS・バージョンを棚卸し
2. 現在の社員デバイス利用ポリシー(BYOD/COPE/COBO)の確認
3. 業務で使用しているSaaS・社内システムの洗い出し
4. セキュリティ要件(コンプライアンス・業種規制)の確認
5. MDM予算の確認

フェーズ2:製品選定(1週間)

Decision Tree:
Microsoft 365 Business Premiumを契約中または検討中?
  → YES:Microsoft Intuneを第一候補に(追加コストなし)
  → NO:続く

主なデバイスはMacですか?
  → YES:Kandji(中小企業・使いやすさ)またはJamf Pro(大規模・高機能)
  → NO:続く

Windows中心でBYODスマートフォン管理も必要?
  → YES:Microsoft Intune
  → NO:規模・予算に応じて選択

フェーズ3:パイロット導入(2〜4週間)

1. 管理者用デバイス(1〜3台)でパイロット開始
2. 基本ポリシー(暗号化・パスコード・OSアップデート)を設定
3. アプリ配布テスト(業務必須アプリの展開)
4. リモートロック・ワイプのテスト(テスト用デバイスで必ず事前検証)
5. 問題がなければ全社展開計画を策定

フェーズ4:全社展開(1〜3ヶ月)

1. 全社員向けの説明会・同意取得(BYODの場合は特に重要)
2. デバイス登録の順次実施(優先度:経営層→ITアクセス権限高い部門→全社)
3. 問題事例の収集・ポリシー調整
4. 定期的なコンプライアンスレポートの確認サイクル確立

よくある質問(FAQ)

Q. MDMを導入すると社員の個人情報(位置情報・プライバシー)が見られますか?
A. フルMDM(デバイス全体登録)の場合、技術的にはデバイスの位置情報・インストールアプリ一覧等が管理者から見える場合があります。ただし主要ツールはプライバシー設定があり、個人情報の収集範囲を制限できます。また社員への事前説明と同意取得が法的・倫理的に必要です。BYODでMAMのみの場合、個人情報は原則として収集しません。

Q. MDMなしで社員のデバイスを管理するリスクは?
A. ノートPCの紛失・盗難時にリモートワイプができない、脆弱なOSのまま業務システムにアクセスされる、退職者のデバイスに業務データが残存する等のリスクがあります。テレワーク環境ではこれらのリスクは特に高まります。

Q. iPhoneを会社で管理する場合、何が必要ですか?
A. Apple Business Manager(ABM)アカウント(無料)とMDMツールの組み合わせが必要です。ABMに会社のiPhoneを登録(DEP登録)することで、初期化してもMDMが自動的にインストールされます。

Q. 社員が退職した場合、デバイスのデータはどうなりますか?
A. MDMのリモートワイプ機能で即座に全データを消去できます。BYODの場合は業務アプリのデータのみ選択的に削除(Selective Wipe)が推奨です。MDMなしでは、退職者本人がデバイスを消去するまでデータが残存するリスクがあります。

Q. Microsoft Intuneは無料で使えますか?
A. Microsoft 365 Business Premiumに含まれています(追加料金なし)。単体ライセンスも購入可能です。まずMicrosoft 365のライセンスを確認してください。

Q. JamfとKandjiはどちらがいいですか?
A. 一般的には:IT担当者がJamfの知識を持っている・または学ぶ意欲がある→Jamf Pro。IT担当者のリソースが少ない・使いやすさを優先→Kandji。価格を抑えたい→Mosyle。という基準で選択してください。


まとめ:2026年MDMツール選択の最終判断

環境・状況 推奨ツール 主な理由
Windows中心・M365導入済み Microsoft Intune 追加コストなし・最深統合
Mac中心・高機能 Jamf Pro Apple管理の最高峰
Mac中心・使いやすさ優先 Kandji 自動修復・モダンUI
Mac中心・コスト最優先 Mosyle Business 最安コスト
Windows + Mac混在 Intune または Intune + Jamf デュアル運用も選択肢
iOS/Android BYOD Microsoft Intune(MAM) MAMによる業務データ保護
予算ゼロから始めたい Jamf Now(3台まで無料) 無料枠あり

結論: Microsoft 365 Business Premiumを既に使っている、または検討中の中小企業にはMicrosoft Intuneが最も費用対効果が高い選択です。Mac中心の企業でIT担当者がいる場合はJamf Pro、いない場合はKandjiを選ぶのが2026年時点での最適解です。